パーマネント野ばら~かもちだす異常性~
パーマネント野ばら(2010年 日本 監督:吉田大八)
菅野美穂演じるなおこが離婚をきっかけに地元の高知県の漁村に一人娘を連れて帰ってくる。
そこで再会する友人2人は貢いでいたり、DVを受けており、かのなおこも地元の中学校教師と密会をしている.....
といったあらすじであり、なおこの周りの人間はみなどこか問題を抱えており、言うならばおかしい人間である。
そんな中でもなおこは自分は大丈夫、まともだと思っているが、
実は密会していた中学校教師は過去に死別しており、すべてなおこの妄想の世界であった。そしてなおこ自身もこの事に気づき、自分も’頭が狂った’一員であったと気づく
現実を受け止め切れないなおこではあるが、周囲の理解と一人娘の存在が彼女を支えていくのである。
この映画の大筋としては
周囲はそれぞれ辛い事情を抱えているが、なおこ自身は幸せな生活を送っているよう映し出しながら、実はなおこも死別した男と想像の中で会っていた。
といった流れであり
なおこはまとも、他は問題を抱えているといった対比構造を作り出しながら
ラストシーンでなおこも落とす事で観る人にも衝撃を与えている。
ただ上手い所は、その順風満帆に見えたなおこの生活にも、違和感を作り出しているという点があります。
この違和感が無いと観る人にとっては話が急展開するため、’????’状態になりかねません。
????状態に陥ると観る人は’何がどうなった?わかんね~’っとなってしまい、途端に観る気が失せます。観終わったとしても’よくわからなかった’といった印象のみが残ります。
会話していても、関連付いた内容だからすんなり次の話しにいけるのであって、突然話題が変わるとついていけなくなりますよね
映画を観る人も人間なので、急展開すぎると話しについていけなくなります。
そこで急展開しますよ~~っていうチラ見せを演出の中で散りばめており、観る人に’何か裏があるのか?’といった感情を抱かせています。
そんな演出が冴え渡るワンシーンを紹介しましょう
主人公なおこと中学校教師カシマのデートの帰り道のシーンです
仲睦まじく2人で帰っていますが
2人のいる所は明るく、その先は暗く
といった対比を作っています。
深掘りするなら幸せな明るい世界と絶望の暗い世界の2つの世界があることを示唆しています。
違和感ポイント①
明るい世界の中で2人は解散します。
その別れ方の演出ですが縦の一本道の構図から横から観た構図にスライドさせています。
それぞれが反対方向へ去っていくことで
別れ方にも’離れる’といった印象を強く持たせています。
もし一本道の縦のままの構図で別れていたら離れる2人は同じ道にいるといった印象が強くなり、その場は別れても今後も上手くいく印象を作り出すことが出来るでしょう。
縦から横へスライドさせる事で、相容れない2人の関係を生み出しています。
また別れ方もカシマはさっと去っていくのに対し、なおこはしばらくその場に居座っています。あえて不自然さを作って違和感を持たせています。
違和感ポイント②
別れた後、なおこは振り返ります。
この時点でなおこは暗い世界へと入っています。またその道の先は見通しが悪く、不気味な赤い光すらあります。
楽しい時間をすごした後なのに妙に暗すぎます。冒頭のシーンで先の暗い世界を見せ、カシマと別れたあとこの世界になおこを入れる。
そういった演出をとることで違和感をつくっていきます。
違和感ポイント③
振り返ったその先は非常に不気味です。
前方は赤みがかった黒・中央は漆黒・光る出口・またその先の漆黒
さっきまで2人がいた光る世界はどこにいったのか。そしてカシマの姿が見えません。
ラブラブ演出なら後ろ姿を確認し、振り返るカシマに手を振るぐらいあってもいいのですが、
なおこが振り向いた先は不気味そのものであり、さっきまでいた明るい世界は消え失せています。
その後パッとカシマの姿が現れます。
手前のトンネルは赤と黒を使った不気味な空間にも関わらず、カシマの後ろ姿は明るく映っています。
なおこ自身が暗い絶望の世界にいて、カシマは明るい世界にいる。
カシマといる時はなおこも明るい世界に居れるが、1人だけだと不気味な空間でしかありません。
現実と虚構の対比、また虚構への逃避を表現しています。
深掘りすると暗い赤色は死をイメージさせる色であり、その先の漆黒を通り抜け、カシマは光で縁取られた出口をくぐる。
ワンシーンでカシマが死んで天国にいることを暗示させています。
違和感ポイント④
カシマの姿を確認できたなおこは満面の笑みを浮かべ歩き始めます。
しかしその道程は左に曲がっており、なおこは道にそって左へ向かうが、その先は真っ暗です。
これもなおこのこれからが暗く澱んだ世界であることの暗示になっています。
こういった幸せの絶頂のようなシーンで、違和感を作り出し、あからさまではないが観る人に不自然さを感じさせる演出を施しています。
いかがでしたか
短いシーンにも様々な演出が施されている素晴らしいシーンだと思います。
是非一度パーマネント野ばらを観てみてはいかがでしょう。
作品自体も
どんなに絶望的で苦しい世界だとしても、その中に小さくとも希望があると思える作品です。
その希望は僕にとっては何なんだ?って考えさせられます。
ロードオブウォー ~光の使い方~
映画分析第一回の投稿をしていきます。
今回選出いたしましたのは
ロード・オブ・ウォー(2005年 アメリカ)
ニコラス・ケイジ演じる武器商人のお話です
※このロードはlordの方でして直訳で戦争の支配者になります
※フィクションではありますが実話を基にしており、戦争の裏側を知ることができます。
※が多くなりましたが作中多々ある演出技法の中で今回は
~光の使い方~について考察していきます。
武器商人としてビジネスをスタートさせた主人公ユーリ
裏社会に関わる者として危ない橋を何度も渡り、そして潜り抜けて来ました。
ビジネスも軌道に乗り、美人の奥さんもゲットし順風満帆です。
そんな中でのワンシーンですが、NYの隠れオフィスに行くユーリ
そこには仕入れた大量の武器と大金があります。
ユーリの横顔がアップで映し出されます。
その顔にはハッキリとした光があてられています。
武器商人として成功したユーリ、仕事もプライベートもなに不自由なく
まさしく彼の今の満たされた精神と期待しかない未来への希望を暗示しています。
しかしビジネスパートナーとしていた弟の正義感から取引が不成立になり、武器商人という仕事に絶えられなくなった弟はドラッグに没落します。
また何の仕事をしているのかを妻に打ち明けられないユーリは家庭も崩壊してしまいます。
満ち溢れたいた過去から一転、ユーリは何もかもを失ってしまいます。
そんな中でのワンシーンですが
ユーリは再び隠れオフィスに足を運びます。
そして同じアングルで再びユーリの横顔が映し出されます。
しかし、その顔は光を当てられず、暗く映っています。
彼の絶望を表現している印象的なワンシーンです。
光の当て方で正の感情か負の感情かを表現することは大変多くの映画で使用されていますが
この映画の光の使い方で憎いポイントは
まったく同じ構図だということ
普通は同じ構図を使うと既視感を与えてしまうので、基本的には避けます。
(ループ表現をするときは同じ構図を使うのは栄えますが)
ですが対比関係を強調するためにも
同じ構図を用いることで再現性を高めつつ、光を使用して2つのシーンの落差を際立たせるといった演出技法を用いています。
同じ構図の中に決定的に異なる点を1つ与える事で、栄光と没落を表現した素晴らしい演出だと思います。
この映画には他にも様々な対比構造が映し出されています。
たくさん紹介したいですが、明日は静岡旅行なので今日は寝るとします。
読んで頂きありがとうございました。
P.S画像を載っけたらほうが絶対わかりやすいと思いますが、著作権が怖くて出来ませんでした。詳しい方がいれば映画画像の載せ方教えてください。
百聞は一見にしかずなので、是非一度ロードオブウォーを観て、言ってたやつはこれかと気づいていただければ大変幸いです。
映画分析ブログ開設
皆様はじめましてmikisawaと申します。
この度人生初のブログを開設いたしました。
動機なんて興味無いでしょうが、映画分析の考察を記事にして発信していこうと思い立ったからでございます。
自分のやりたいこととかはっきりしないまま四半世紀生きてきて、仕事とかプライベートとかどれも満足出来ないままでした。
転職すれば勤務地を変えればなんて今思うと浅はかな事もしましたが、それがきっかけになって本当に自分がやりたいことって何だ?って考えた時、趣味の映画分析を発信したいなと思い立った訳でございます。
自分のやりたいことを企業に求めても、職務内容が本当に自分のしたいこととマッチすることなんてほんの一握りだし、求め続けて待ち続けてやっとマッチしたとしてもやりたいようにやるなんて社員である以上は限界もありますよね。。。
仕事を通して人生の幸福を求めようとしていた自分に気づき、それは違う、もっと自由な所があると思い、ブログに行き着きました。
長々と前置きを書いてしまいましたが、本題に入ります。
皆さん映画分析と聴いて思い当たる節はありますか?
映画分析とは何か
⇨映画を観る視点を持つこと
だと私は思ってます。
その中でも私の映画分析は演出技法についてといった視点になります。
皆さんは好きな映画って1つや2つはあると思います。
そしてその映画を好きな理由って皆それぞれあると思います。
心穏やかになるあの田舎の世界観がたまらない(天然コケッコー)
どんな困難や杞憂があろうとも前を向こうと思える(リトルミスサンシャイン)
斎藤工がセクシーすぎる(昼顔)
などなど.......
そんなみなさんの好きな映画には実は緻密に計算された演出が施されているのです。
すぐには気づかないけど、その演出技法によって無意識のうちに感情を動かされているんです。
それを分析して、感動すら覚える演出技法を発見した時の満足感たるや、現実世界で宝箱を見つけたような感覚です。
だいぶ言い過ぎましたが、そういった発見を発信していきます。
ブログ超初心者かつ、記事を見られる事の緊張を感じておりますが、皆様の日常に少しでもへぇ~そうなんだ今度観てみよみたいな事が生まれる事を目指して更新していきます。